USGAグリーンセクションスタッフ
ゴルフコースで枯れた芝を見るのは決して快いものではありませんが、どのゴルフコースでも枯れた芝を見ることがあります。ラフの奥まった場所で枯れている場合は大きな問題ではありませんが、ティーインググラウンドやグリーン、フェアウェイなど、目につきやすい場所に枯れた芝があればゴルファーは気づき、ゴルフコース管理者(日本ではグリーンキーパーです)も神経質になります。そして彼/彼女は、芝生に何が起こったのか、なぜ枯れたのか、という疑問を当然持ちます。その答えは通常、様々な要因が絡み合っているのですが、そのうちのいくつかは、グリーンキーパーの手に負えないことかもしれないのです。ここでは、その原因として考えられるものをいくつか挙げ、その原因についてもう少し詳しく説明したいと思います。
人の往来の多さ
ゴルフカートやメンテナンス機材、そしてゴルファーの通行量も芝生にストレスを与えます。生育条件が整っていてゴルファーの通行量が散らばっていれば、さほど深刻な問題にはならないかもしれません。しかし、ゴルファーの往来が集中するような場所では、芝が薄くなったり、まったくなくなってしまうことがあります。こうした状況は特に悪天候の時や、コース内の日陰地のような芝草の生育が厳しい環境でよく見られるものです。カート道の両サイド、グリーンやティーグラウンドなどの芝刈機が方向転換で回転する場所、ゴルファーがバンカーからの出入りでよく利用する場所などに裸地ができるのは、すべてゴルファーや管理機械の移動による踏圧被害の一般的な事例です。これら交通量を分散させる現実的な対処方法がない場合、グリーンキーパーにできることは、芝をできるだけ健康に維持し、最善を祈ることだけです。交通量の多いトラブルスポットは、ほぼ毎年芝を張り替える必要がありますが、このことに驚かないでください。
厄介モノな病害虫
芝生を傷つける害虫は種類も多く、中には数日で広い面積を枯らしてしまう種もあります。病原菌による病気、昆虫、寄生虫、その他さまざまな動物などが問題を引き起こす可能性があります。ゴルフ場は、多くの昆虫による被害や病気を防ぐために予防的な薬剤散布を行うことができますが、すべてのコースに十分な余裕があるわけではありません。また、害虫は絶え間なく進化しており、薬剤に対して耐性を持つようになることもあります。ゴルフ場がどのような防除プログラムで対処するにしても、特定の害虫にとって条件がちょうどよくて、芝生が枯れるといった代償を払うことになる場合もあります。
水管理の問題
ゴルフコースに散水する水量が多すぎても少なすぎても、芝は枯れます。大半のゴルフ場が灌漑システムを導入しているとはいえ、その質と灌漑範囲はゴルフコースによって異なります。暑くて乾燥した日が何日も続けば、灌漑システムの弱点が浮き彫りになります。乾燥した天候が続けば、芝生面の茶色く変化した斑点は大きくなり、やがて痩せて枯れてしまいます。ところが逆に、土壌中の水分が多すぎると、芝(植物も呼吸していますから)が窒息したり、有害な病気が発生しやすくなります。また、水分が多すぎる状態の芝は、ゴルファーの通行量や極端な暑さ・寒さによるダメージを受けやすくなります。このような問題発生箇所は、整地や排水工事を行うことで改善することができますが、すべてのコースがこのような工事を行えるわけではありません。
樹木のトラブル
ゴルフコース内に植えられている樹木は、実は芝生を枯らすだけでなく、すでに説明してきたような問題を引き起こす原因となることもあります。同じ植物でもあり、樹木は、光、栄養分、水をめぐって芝生と直接競合し、樹木は常に優位で、これらの戦いに勝利します。樹木との競合が直接芝を枯らさなくても、競合により発生したストレスが芝を瀕死の状態に追い込むことがあります。そのため、樹木の近くではゴルファーの歩行や病害虫、干ばつによる被害がよく見られるようになります。芝生の被害はこうした複合的なストレスが原因で起こります。樹木の管理は大きな効果が期待できますが、それには費用がかかります。ところが、自然が好きなゴルファーは選択的な樹木の伐採には消極的です。
このように芝に対する脅威が多々あるにもかかわらず、ゴルフコースにこれほど美しい芝があるのは信じがたいことなんです! グリーンキーパーは芝が枯れないように最善を尽くしていますが、時には不利な状況に追い込まれることもあります。コースメンテナンス資源を増やし、インフラを整備することは確かに助けになるのですが、あらゆる手段を駆使しても芝が枯れることはあります。こうした状況では、メンテナンスチームと大自然が正常な状態に戻すのは時間が必要です。元の状態に戻るまでの間は辛抱してください。メンテナンスチームは、枯れた芝生を気遣い、この小さな植物を生かすために懸命に働いていることを知っておいてください。
Reprinted with permission of USGA Green Section