ザック・ニコルディス(Zach Nicoludis、USGA中部地域ディレクター)
CAP:自動芝刈り機は従来の機械よりも静かで、昼夜を問わず稼働します。今後数年間で、ゴルフコースでより多くの自動芝刈り機が見られるようになるでしょう
テクノロジーの進歩は生活のあらゆる側面に影響を与えており、ゴルフコースのメンテナンスの世界も例外ではありません。ゴルフコースで様々な作業をこなせる自律型機器の開発は大きく進歩しており、近い将来、ゴルフコースでこの最新技術を目にすることになるかもしれません。まだご覧になっていない方もいらっしゃるかもしれませんが、最新のテクノロジーを紹介します。
“日本でもゴルフコースの芝刈り込みに使われ始めています。あるメーカーの情報ではGPSによる位置測定誤差は±1.5㎝だそうです。芝の品質管理との関係もあり、この誤差ではグリーンの刈り込みにはまだ使えません。米国でも使われているのはグリーン以外のフェアウェイやラフなどの場所です”
ゴルフ場運営が直面する最大の課題の一つは、これまでも、そしてこれからも、人員管理です。スタッフの採用と労務管理は難しい状況が考えられます。ゴルフ場整備部門の賃金は、同じ人材をめぐって競合する他業界に追いつくのに苦労しており、多くのコース管理チームは人手不足の状況に陥っています。同時に、ゴルフ場はかつてないほどの利用者数を記録しており、コースは混雑しています。スタッフの仕事量は増え、作業時間も増えています。今回紹介する自律走行型の芝刈機は、人員管理の負担を軽減し、運用効率を向上させる可能性を秘めています。
フェアウェイやラフ、クラブハウス周りの芝生といった、広くて人通りの多いエリアでの自動運転芝刈機は、近年、ゴルファコースのイノベーションとして関心を集めています。これらのエリアに多くの作業時間が費やされていることを考えると、これは当然のことです。さらに、自動運転芝刈機は従来の機器よりも静音性に優れているため、クラブハウス周辺やコース上での騒音を軽減します。これらの芝刈機は軽量であるため、従来の芝刈機よりも芝生の摩耗が少なく、柔らかい芝でも損傷を与えることなく作業できます。
現在、米国ではゴルフコース向けに2種類のロボット芝刈機が販売されています。一つは、手押し式芝刈機とサイズが似ている小型の回転式ユニットで、もう一つは、従来のフェアウェイ用芝刈機に似たリール式芝刈機(もちろんオペレーターは不要)です。リール式はらせん状のカッターと固定された刃で芝草をはさみこんで芝を刈る方式で、切り刈刃が回転して芝を刈るロータリー式芝刈機は通常、刈高の高いラフで使用されますが、低い刈高が必要ないフェアウェイの箇所で使用するコースもあります。大型の自律式リール式芝刈機は、一般的なフェアウェイの刈高に設定でき、4~6時間の充電で20~25エーカー(8~10ha)の芝草を刈り取ることができます。どの自律型芝刈り機を使用するかに関係なく、これらの機械には周囲を監視するセンサーが搭載されています。人に近づきすぎたり、ボールを踏みつけたりする前に停止します。また、昼夜を問わず芝を刈ることができるため、運用効率が大幅に向上します。
CAP:大型のリール式自動芝刈り機は、比較的最近の技術革新であり、大きな可能性を秘めています
自律走行技術が普及しつつあるもう一つの分野は、練習場でゴルフボールを回収する機器です。通常、ゴルフショップのスタッフ(米国の公営コース等ではショップのスタッフがスタートの管理もします)が練習場のボールを回収する役割を担っていますが、自律型レンジピッカーを導入することで、スタッフは他の業務に専念できるようになります。小型で軽量な機器は、一般的な練習場用車両よりも消耗が少なく、雨天や軟弱なコンディションでも稼働し、旗やバンカーなどの障害物を回避するようにプログラムすることも可能です。グリーンセクションレコードの動画「Robots on the Range(練習場のロボット)」では、2024年全米オープンなどを含む、この種の機器がどのように活用されているかが紹介されています。
バンカーレーキ用の自律型機器はまだ開発されていませんが、バンカーのメンテナンスに費やされる時間と費用を考えると、自律型オプションが有益となる分野であることは間違いありません。メーカーが参入できる分野かどうかは、今後の課題です。
重要なことは、自律型機器への投資を、メンテナンス予算を削減する機会と捉えるべきではないということです。むしろ、この種の機械は、ロボットでは対応できない他の作業に、希少な労働力を再配分することを可能にします。
初期の結果に基づくと、自律型機器がゴルフコースのメンテナンスにどのようなメリットをもたらすかは、まだ一部の成果しかわかっていません。この技術がゴルフコースで普及するには時間がかかりますが、コース管理用ロボットの登場は間違いないでしょう。
Reprinted with permission of USGA GreenSection