ディボット改善の原動力とは?

ブライアン・ジートカ(Brian Gietka、USGA東部地区農学者)

人の往来の多さ、狭いスペース、タイミングの悪さなどが重なると、ディボットからの芝生の回復が非常に難しくなる場所があります

ゴルフのラウンド中にディボットができるのは避けられませんが、ディボットができた芝生を回復させる作業はコース管理者にとって難しいことです。ゴルフ人気が高まる中でティーグラウンドやフェアウェイにディボットが増え、多くのゴルフコースではディボットの回復が大きな話題になっています。ここでは、ディボットからの回復に影響するいくつかの要因をお話しするとともに、ゴルファーが芝生の回復プロセスをどのようにすれば手助けできるかをお話ししましょう。

芝草の成長力

芝草の成長力はディボットからの回復に大きく影響します。クリーピングベントグラス、ケンタッキーブルーグラス、バミューダグラスなどは、茎が水平に伸びて成長する匍匐型の芝草です。地表面の芝草の密度だけでなく地下の根の密度も重要です。ベントグリーンのような寒地型芝草でディボットを取るようにショットをすると芝生面の下の土壌の奥深くまでディボットができます。最近増えているバミューダグラスや昔からの日本芝(ゾイシアグラス)のような暖地型の芝草は、地表下の根と茎との間に密なマット(刈カスなどの堆積物)があり、ディボットは浅く、地中の茎から新芽を伸ばす能力もあるため、ディボットからの回復は速くなります。

種子を撒く

根や茎からの治療に加えて、種子を撒くこともディボットからの回復を助けることができます! 多年生のペレニアルライグラスは発芽が早いことで有名で、理想的な条件下であれば、播種から1週間もかからずに発芽します。他の芝草はそれほど速くありません。クリーピングベントグラスは2週間程度で発芽し、ケンタッキーブルーグラスは1カ月かかることもあります。フェアウェイやティーグラウンドの目土砂(ディボットミックス)を使用した場所では、回復時間が制限される可能性があります。

一方、日本芝のような暖地型芝草は通常、種子を撒くことはありません。芝の茎かソッドと呼ばれる切り芝で改修します。バミューダグラスやゾイシアグラスのティーグラウンドやフェアウェイでディボットミックスに種子が入っているのを見かけないのはこのためです。

温度

ディボットからの回復には温度が重要です。寒すぎると種子は発芽しませんし、芝の生育が悪いと表面は芝生で埋まっていきません。ほとんどの芝は冬になると生育が鈍りますが、多くの寒地型の芝は夏になると生育が鈍ります。米国の北部地域のような涼しい地域では夏がゴルフの最盛期ですから、これらのゴルフコースのフェアウェイやティーグラウンドに使われている芝は、高温多湿になるとストレスを受けます。芝草の成長が遅くなる時期が、プレーがピークになるシーズンと重なることからディボットの回復が遅くなることが多いのです。そのため、寒地型芝草のコースの多くは、夏が終わるころになるとランディングエリアやティーグラウンドがディボットだらけになってしまうのです。寒地型芝草は、夏の終わりから秋の初めにかけての涼しい気候にならないと回復しません。

しかし、(日本のように)暖地型芝草であれば、夏のディボット回復はさほど問題にはならないはずです。ところが、これらの芝を使用しているゴルフコースの多くは、生育が遅くなるか完全に止まるショルダーシーズン(夏場を挟んだ時期)や冬の間もラウンド数が多く忙しい。このような状況では、ディボットは春の終わりから初夏まではほとんど回復しないままの状態が残っていることになります。つまり、12月に作ったディボットが5月になっても残っている可能性があるということです!

生育環境と通行量

芝がよく育つ場所では、ディボットは早く回復します。当たり前のことのように聞こえますが、生育環境はディボットからの回復において見落とされがちな要素です。日陰の場所、湿気の多い場所、灌漑の行き届かない場所に発生したディボットは、どんな種類の芝であっても回復しにくいものです。通行量も回復が進まない理由の一つです。プレーヤーなどの通行量が多いと、新しく伸びてきた茎や苗が繰り返し踏みつけられるため、ディボットの回復が遅くなります。この問題は、狭いティーグラウンドなど、ゴルファーが集中する場所で特に顕著になります。

ゴルファーにできることは?

ゴルファーができる最初のステップは、ゴルフショップのスタッフ(日本だとキャディマスターかスタートハウスのスタッフ)にコースはどのようなディボット修復方法を採用しているかを聞くことです。できる限りショットで切り取った芝生をディボットとなった元の場所に戻してほしいというところもあれば、種子が混入されたディボットミックス(目砂)を使ってほしいというところもあります。また、フェアウェイやティーグラウンドには目砂を使用してほしいが、ラフには使用しないでほしいというところもあります。修復方針がわかったら、ディボットミックスを持っていることを確認し、自分が作ったディボットと他のディボットをきちんと修復するよう最善を尽くしましょう。練習場ではスイングでディボットを取らないようにし、コースを練習場として使いたいという誘惑に負けないようにしましょう。タフなショットを練習するために、余分なボールを数球落としたくなるかもしれませんが、多くのゴルファーがディボットの数を増やすこのようなことをする必要はありません。練習は練習場で行ってください。

ゴルファーやメンテナンスチームが最善を尽くしても、多くのプレーや不良な天候のために、ディボットが長く残る時期があります。ディボットの回復について疑問や不安があれば、コース管理者やスタッフに尋ねてみてください。芝生の成長を観察することは、思っている以上に面白いものだと気づくはずです!

Reprinted with permission of USGA Green Section