クリス・ネフ(Chris Neff、USGA東部地域アグロノミスト)

CAP:ゴルフコースの状態や管理方法について疑問があるときは、まずコースのグリーンキーパー(米国ではスーパーテンデント)にたずねるのが一番です
ゴルフコースの維持管理は、芝を刈ったりスプリンクラーを回したりするだけではありません。芝生、バンカー、自然植生エリアのすべてが、管理意図に基づいて科学的かつ精密に管理されています。プレー中に目にする光景や会話からコース状態についての印象を持つゴルファーも多いですが、その日の見た目だけではコースコンディションの全体像はつかめませんし、友人の話が必ずしも正しいとは限りません。
ここでは、ゴルフコース管理についてよくある一般的な三つの誤解を取り上げ、正しい理解につながるように、コース管理に込められた技術と芸術への認識を深めていただければと思います。
誤解その1:自然風のエリアは管理に手間がかからない
一見すると、在来植物や自然な景観エリアは、手間もコストもかからないように思えるかもしれません。しかし、それは大きな誤解です。実際には、他のエリアと同じくらい、あるいはそれ以上に計画性と注意が必要な場合もあります。
特に重要なのが雑草管理です。放置された自然風エリアは、メヒシバや、スズメノカタビラ、広葉雑草などの侵略的な雑草が入り込む温床となります。望ましい植生や景観、プレー性を維持するには、常に監視し、手間のかかる雑草対策を行わなければなりません。
また、自然風エリアには美観や環境保全、コースデザイン上の意図といった役割もあります。グリーンキーパーは、在来種の播種、刈り込み時期の調整、休眠期の焼却による雑草管理などを行うこともあります。頻度こそ少なくても、非常に戦略的な管理が求められ、目標とするコース状態によっては多くの人手が必要になることもあります。
誤解その2:芝を短く刈ればグリーンは速くなる
土曜の朝、グリーンが思ったより遅く感じられるときによく聞く指摘ですが、グリーンスピードが速くなるかどうかは、単に芝の刈高を下げればよいというものではありません。
刈高を下げすぎると、芝の葉面積が減り、光合成がしにくくなります。その結果、根は浅くなり、暑さや病気、踏圧に対して弱くなってしまいます。滑らかで速いグリーンをつくるには、刈高調整のほか、ローリング、目砂散布、バーチカルモア(縦方向の刈り込み)、適切な灌水など、さまざまな管理手法をバランスよく組み合わせる必要があります。
グリーンスピードは繊細な「レシピ」であり、単一の要素で決まるものではありません。グリーンキーパーは、健康でプレーしやすいグリーンを提供するために日々努力していますが、「速い」と「壊れる」の境界は紙一重なのです。
誤解その3:芝が緑でないならもっと水をやるべきだ
ゴルファーから最もよく聞く誤解かもしれません。確かに灌水は重要ですが、スプリンクラーを回せば芝が緑になるというものではありません。
芝の色は、品種、土壌条件、栄養状態、天候など多くの要因に左右されます。見た目の色を追い求めて水を与えすぎると、根が浅くなり、病気にかかりやすくなり、結果として柔らかくプレー性の低い地面になってしまいます。グリーンキーパーは、健全で速く、しっかりとした芝を目指しており、そのためには一部のエリアがやや乾燥して見えることもあります。
現在では、最新の技術を用いて、必要な場所にだけ精度高く水を与えることができます。高いプレー性をもつ健康な芝は、必ずしも鮮やかな緑色をしている必要はありません。
ゴルフコースの管理に携わる人々は、豊富な知識と経験を持っています。すべての作業には理由があり、「何もしない」ことにも意図があります。もし疑問や気になる点があれば、ぜひコースのグリーンキーパーに直接たずねてみてください。真実を知れば、あなた自身が「俗説バスター(解説者)」になれるかもしれません!
Reprinted with permission of USGA Green Section
